私が乗り鉄を趣味として約4年間、日本全国のJRと私鉄の全路線の99.1%に乗車した。ところが、山を登るケーブルカーも「線路の上を走る鉄道」であることから、わざわざケーブルカーだけを乗り鉄する旅が後から始まったのである。
これまでに、北九州の八幡駅近くにある皿倉山ケーブル、六甲ケーブル、生駒山ケーブル、西信貴ケーブル、そして箱根の強羅から出る箱根登山ケーブルなどに乗車した。今回は、高松にあるその名も「四国ケーブル」に乗ることになった。会社名は「四国ケーブル株式会社」で路線名が「八栗ケーブル」であり、地図の中、右側の赤線で囲まれた太線が八栗ケーブルである。

高松には「ことでん」(高松琴平電気鉄道)という鉄道がある。高松から金刀比羅宮(こんぴらさん)へ向かう路線のほかに、源平合戦で有名な屋島の近くを走る志度線があり、その八栗(やくり)駅まで移動する。そこから2キロほどの坂道を登った先に、四国ケーブル株式会社が運営する「八栗ケーブル」の乗り場があるのだ。
調べてみると、八栗ケーブルの終点には四国八十八ヶ所霊場の第85番札所「八栗寺」があるとわかった。そこで旅の始まりとして、まずは京都の東寺へと向かった。新幹線から五重塔が見える、あのお寺である。そもそも東寺は弘法大師(空海)ゆかりの寺であり、ここで納経帳(御朱印帳)を授かり、それを携えて四国八十八ヶ所を巡る習わしがあるらしい。
一般的にイメージする御朱印帳は大人の手のひらより一回り大きい程度だが、東寺で授かった納経帳はそれよりも二回りほど大きなサイズであった。これほどの重みを背負って四国を巡るのかと思うと、身が引き締まる思いである。

さて、京都での常宿近くにある市営地下鉄四条駅の始発は5時33分。早めに向かったところ、まだ駅のシャッターが閉まっており、しばらく待つことになった。京都駅に着いても始発の新幹線はまだ動いていない時刻だったため、まずは在来線で新大阪駅へと移動。そこからようやく新幹線に乗り込んで岡山駅を目指した。
岡山から高松へ渡り、高松駅から高松築港駅まで5分ほど歩き高松築港駅から「ことでん」に乗り、二駅目の瓦町駅で志度線に乗り換えて、目的の八栗駅に到着したのは9時38分。ここまでの移動時間はすでに4時間を超えていた。
しかし、ここからすぐにケーブルカーの駅へ向かうのではない。まずは、讃岐うどんの朝食である。
向かったのは、創業7年ながら数十台規模の駐車場を構え、外にはテント張りの待合スペースを持つ大人気店「おうどん 瀬戸晴れ」である。地元の方におすすめのメニューを尋ね、定番の「生醤油うどん」をいただいた。

食後、隣席の方にケーブルカーの駅への道を尋ねたところ、「とてもではないが、歩いて登れるような道ではない」とのこと。お言葉に甘えて、駅までの約2キロの急坂を車で送っていただくことになった。実際に車窓から眺める道は、言われた通り、徒歩で登るにはあまりに過酷な上り坂ではあった。何しろケーブルカー駅近くにタクシー営業所があるくらいなのである。
思い返せば、神奈川県伊勢原市にある大山ケーブルや六甲山の摩耶ケーブルの駅も山の中腹にあったのだ。つまりはケーブルカーに乗るのも一苦労なのである。
さて、八栗ケーブルは、毎時0分15分30分45分と15分間隔で運行されていて、平日の昼間だったこともあり、乗客は数名であった。

山上の駅に着くと、そこからが四国令状第85番札所八栗寺の参道になっている。駅と本堂の間には谷が大きくえぐられていて、参道はその谷を回り込むようにしてU字型に作られている。その山道の途中には、いくつかの御堂があり、寄進者とその金額や年月日が書かれた石柱が所狭しと並んでいる。最近の寄進額の相場は百万円のようであった。

まずは本堂にお参りしてから、記帳をお願いする窓口のある場所「納経所」へ向かう。何しろ生まれて初めてのことなので、正直にそれを伝え、納経帳を差し出しながら、どのようにしたら良いかを尋ねたが、相手は黙って納経帳のページを開いて筆を下ろして墨写り防止の小さく切った新聞紙を挟み、パタンと閉じたのである。あとでそのページを開くと、納経帳の各ページの左上には札所の番号と寺の名前が印刷されていることに初めて気がついた。なお、正式名称「五剣山観自在院八栗寺」のご利益は、商売繁盛や財運向上、縁結び、心願成就など幅広くあるらしい。

さて、本堂だけでなく大師堂もお参りするようにとの納経所のおじさんのご助言に従った。記帳の代金は500円、お賽銭はそれぞれ100円なので、合計700円の浄財を収めることとなったのである。
この後に八栗ケーブルに乗り下山し、また歩いてうどん屋に入った。今度は約800坪の敷地を誇り、300席もある「うどん本陣 山田家 讃岐本店」である。造り酒屋であった建物は登録有形文化財という店である。また、「ぶっかけ」の元祖ということでもあった。


両足にマメができて急な坂道の歩行が困難となり、うどん屋でタクシーを呼び下山。そこから琴電の八栗駅、高松築港駅を経て、JR高松駅、岡山駅まで戻ったのであるが、そこから新幹線を使わずに在来線で京都に移動したのである。新幹線なら1時間の旅を、在来線で乗り継ぎながら3時間もかけて移動したのである。この移動にはもちろん理由がある。
2026年3月14日に山陽本線の姫路駅とその西側の英賀駅との間に「手柄山平和公園駅」が新規開業したのである。新駅ができるということは、線路も新しくなるということである。つまりは、新駅開業と同時に「未乗車」の区間ができたということなので、その区間を乗りに行かねばならないのである。
東京の人なら、品川駅と田町駅の間にできた「高輪ゲートウエイ」駅によって、山手線のルートが変更されたことはご存知かもしれない。また、東武鉄道「東京スカイツリー」駅の下りホームは2025年12月7日に浅草寄りに移転したので、その時点で昔の完乗記録は抹消され、未乗車区間が出てくるのである。まことに乗り鉄は普段の情報収集とその対応が必要であり、じっとしていられないのである。
なお、2026年3月18日に姫路駅まで来ていながら、その4日前に新駅ができていたことを知らずに大阪方面へ移動してしまったことは今でも後悔しているのである。
なお、皿倉山ケーブルは
tanakinskywalker.hatenablog.jp
箱根登山ケーブルは
tanakinskywalker.hatenablog.jp
生駒山ケーブルは
tanakinskywalker.hatenablog.jp
西新羅ケーブルは
tanakinskywalker.hatenablog.jp
十国峠ケーブルは


































